星野仙一監督“鉄拳制裁”の現実 キレるのは「野球人としてあるまじき行為」に対して
「中日でしっかり体の軸で打っているバッターはおまえだけだ」
1986年12月、1対4の世紀の大型トレードで中日入りした落合博満さんに、春のキャンプで顔を合わせるなり、いきなりこう言われた。三冠王3度の大打者だけに、うれしくないはずはない。
それ以降、話をするようになり、マシンと正対する形で、ホームベース上に立ってボールを待つ「正面打ち」を教えてくれた。空振りをすれば体に直撃するが、「バットを体の内側から出す練習になる。外回りになると空振りして体に当たるから」と教わった。
星野監督が仕掛けたトレードが奏功。就任2年目の88年にリーグ優勝を果たした。そんな星野監督は怖いイメージがあるが、意外にも「何であそこでこの球を投げるんや」といった配球のことは全く言わなかった。ただ、「捕手の意図が投手に伝わっているのか?伝わっていないなら捕手が悪いんだ」と言われることはあった。星野さんとバッテリーを組んでいる時、「オレが首を振ってもサインを変えないのはおまえだけや」と言われた。私の頑固さを知るだけに、意思のあるリードを求められた。