担当したライバルが蹴落とされないかヒヤヒヤ…そして気になる自分の評価

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 担当した若手がせっかくレギュラーに定着、これから中軸を狙おうってのに、入ってきたばかりの新人にポジションを奪われたらたまらない。オレ自身の評価にもかかわってくるだけに思わず、「あのルーキー、自主トレから飛ばしてたし、相当、疲れがたまってるみたいです。ボチボチ、地が出るころですよ」って部長に言ったさ。

 ところが、その新人外野手、フリー打撃直後の練習試合に代打出場。相手チームのローテーション候補から、いきなりクリーンヒットを打ったんだ。

 その瞬間、部長はオレの方を見てニヤニヤしながら、「とても疲れがたまってるようには見えねーけどな」なんて言うから、まったく、穴があったら入りたい心境だったね。

 球場からの帰り際、オレは自分が担当したくだんの選手と話をした。選手の精神面のケアもオレたちの仕事だからね。気になることはなかったし、ポジションの重なるルーキーを必要以上に気にしているふうでもない。なので「ルーキーには負けるなよ!」ってゲキを飛ばしたんだ。

 部長によれば、「キャンプは自分たちの目を鍛え直すいい機会」だそうだ。アマチュア選手ばかり追い掛けてると、どうしたって選手を見る目が甘くなる。つまりヘタクソばかりみてたら、プロでやる実力がない選手でもうまく見えてしまうってことさ。そうならないようにレギュラークラスのプレーを目に焼き付けておく必要があるということだ。それが大切なのは百も承知だが、オレたちはどうしたって目先の評価、自分たちが部長やエライさんにどう見られているかが気になるものなんだ。

(プロ野球覆面スカウト)

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