日ハム選手とコーチをソノ気にさせる新庄監督の「言葉力」 巧みな使い分けにも必ず伏線

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投げかける言葉を人によって変える

「レギュラーは決まっていない」

「横一線」

 日本ハムの新庄監督が昨秋に就任して以降、今日まで繰り返し語っている言葉だ。

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 この言葉に奮い立つ選手は多い。「僕は2年間、ケガで投げることができていないので、プラスだと思っている」と言うのは一昨年8月に右肘の靱帯を修復するトミー・ジョン手術を受けた石川直也(25)。かつての抑えのエースが復帰に意欲を燃やせば、新人も目の色を変えている。「横一線と聞いて新人でもチャンスがあると思った」とは昨年のドラフト3位入団の内野手・水野達稀(21)だ。

 新庄監督が選手を名指しで褒めることを避けているのも「横一線」を強調するためだろう。紅白戦や練習試合後の会見で報道陣が特定の打者、投手の名前を挙げて感想を求めても、「ねっ! でもまだまだ。あと5、6試合で。結果が出た選手ではなく、結果が出てくるだろうなっていう選手を使っていく」と、かわすシーンが目立つ。「レギュラーは決まっていない」、特定の選手を評価しないから、選手は自分にも可能性があると思っているようなのだ。

■万波には「もしよかったらやってみて」

 選手個々に投げかける言葉は、人によって変えている。

 例えば、プロ4年目の外野手・万波中正(21)に対しては、こんなふうに声を掛けている。

「ボールの上っ面をホント、削り取るようなイメージでやったら、オレはメジャーの速いピッチャーも打てた。だからもしよかったらやってみて」

 一見すると単なるアドバイスだが、「そういう言い方をした伏線があるんです」と続けるのは球団OBだ。

「万波は自分は長距離打者という意識が強く、追い込まれてからも一発を狙って大振りしがち。三振も多かった。二軍ではバットに当てられていても、昨季の一軍49試合は打率.198です。一軍のコーチ陣もたびたび指導したが、一向に変化が見られなかった。新庄監督も一度、『ホームランはいらないから、二塁の頭を越す当たりを』と促したようですが、キャンプで改善の兆しが見えない。それで言い方を変えてみたようです」

 万波は15日の巨人戦の第1打席で、中前にクリーンヒットを放った。下からしゃくり上げるのではなく、肘をうまく畳んだコンパクトなスイングで二塁右へ運んだ。

「クビになってもらいます」にコーチ陣も刺激

 同じく4年目、2018年夏の甲子園の準優勝右腕・吉田輝星(21)に対しては歯の浮くようなセリフを連発している。

 昨秋キャンプでは報道陣に向け、「めっちゃ速くね? オレの現役の時じゃ打てないわ」と絶賛。今キャンプでは、元阪神藤川球児氏から1時間ほどの指導を受けた後の吉田に対し、「ホントすごく良くなってるね。試合でどれほど通用するのか、ストレート予告してから投げてみなよ」と声を掛けた。

 吉田はこだわりのある直球を褒められたことが大きなモチベーションになっているという。

「彼はお山の大将タイプ。いいね、すごいねと褒めて、気分を良くした方がその気になる。新庄監督は吉田のそんな性格を知ったうえで、言葉を掛けているのでしょう。本人もかなり自覚が出てきたようで、藤川の教えも身になりつつあると聞きました。新庄監督はとにかく選手をよく観察していると、コーチ陣も舌を巻いているようです」(前出のOB)

 プロ2年目の五十幡亮汰(23)は、チームナンバーワンの俊足で強肩の外野手。新庄監督の掲げる「ノーヒットで点を取る野球」「守り勝つ野球」のキーマンとも言うべき存在だ。

 2日に陸上十種競技の元日本チャンピオンでタレントの武井壮(48)が臨時コーチとして訪れると、ひとりだけ「個別レッスン」を受けた。「ビッグボスから特別なことは言われていない」(五十幡)というが、“特別レッスン”はどうやら新庄監督の指示。体の使い方という極めて専門的な部分だけに、あえて自分は何も言わず、武井壮の言葉で五十幡の身体能力をアップさせたかったのだろう。

 新庄監督の言葉に影響されているのは選手に限らない。「1年で結果が出ないと皆さんもクビになってもらいます」と言われたコーチ陣もまた刺激を受けている。

日本ハムのコーチ陣は原則1年契約。結果次第でいつクビになってもおかしくないのに、上層部にコネがあるから数年は安泰と気の緩んでいるコーチも中にはいますからね。新庄監督によって一年一年が勝負という、当たり前のことを再認識して危機感を持つコーチもいるそうです」(前出のOB)

 新庄監督は就任会見時に「僕は(人の)メンタル的なものを引き出す力がものすごく自分にあると思う」と語っていたが、いまのところ選手もコーチも「その気」になっているようだ。

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