ワリエワ“鉄の女”コーチの調査結果に注目…露フィギュア再建にちらつく「皇帝」プルシェンコの影
先の北京五輪でカミラ・ワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング問題が火を噴き、混乱に陥っているロシアのフィギュアスケート。WADA(世界反ドーピング機関)は教え子への薬物提供ルートを明らかにするため、エテリ・トゥトベリゼ・コーチ(48)らの調査に乗り出した。「鉄の女」の関与が明らかになれば、ISU(国際スケート連盟)から資格停止処分などの厳罰を受ける可能性も浮上している。
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ロシアのトップスケーターは指導者不在の異常事態を招きかねないが、同国は指導者が豊富。ロシア連盟は地に落ちたフィギュア王国の復権に向け、“皇帝”と呼ばれた男を切り札として投入するという。
五輪、世界選手権、GPファイナル合わせて9個の金メダルを獲得したエフゲニー・プルシェンコ氏(39)だ。羽生結弦(27)ら多くの男子スケーターが慕うプルシェンコ氏は現在、サンクトペテルブルクを拠点に指導や振り付けを担当しており、今後は多くのトップスケーターが皇帝の門を叩くことになるとみられている。
坂本、紀平に立ちはだかるプルシェンコ直伝の表現力
プルシェンコ氏はフィジカルへの負担が大きい4回転など、女子のプログラムの高難度化に異論を唱えており、大技よりも楽曲に合わせた表現力を重視した振り付け、指導に定評がある。
10代のスケーターを使い捨てにするトゥトベリゼ氏とは対照的に、プルシェンコ氏の教え子は選手寿命が長い。自身が現役時代から指導に携わり、2014年GPファイナル、15年世界選手権を制したエリザベータ・トゥクタミシェワは25歳になった現在でもトップスケーターに君臨。安定感のある3回転ジャンプと円熟味を増した表現力で、今季はGPシリーズ2大会で2位に入り、昨年12月に予定されていたGPファイナル(大阪=中止)進出を果たした。
折しも25日には、昨年、右距骨を疲労骨折し、北京五輪出場を断念した紀平梨花(19)が、26年ミラノ・コルティナ五輪出場を見据えて都内のリンクで行われたアイスショーで復帰。次回大会では北京銅メダルの坂本花織(21)ら日本勢は、皇帝の教えを受けたロシア勢の表現力が壁になりそうだ。