ロッテ佐々木朗希は「魔球」を隠し持っている! 脱フォーク多投へ“宝刀”を抜くのはいつ?

公開日: 更新日:

 初回、記録はいきなり途切れた。

 24日のオリックス戦に先発したロッテの佐々木朗希(20)が、先頭打者の福田周平に初球の159キロを右前にはじき返された。10日の完全試合から続けていたパーフェクト投球は17イニングでストップ。五回に2点を奪われ、連続無失点記録も22イニングで途切れた。それでも、5回6安打2失点。先発投手の役割は果たして今季3勝目を手にし、試合後の本人は「苦しい形にしてしまうことが多かったが、どうにか(多くの)点を与えなかったのがよかった」と前を向いた。

【写真】この記事の関連写真を見る(19枚)

■直球狙いのオリ打線

 評論家の橋本清氏がこう言う。

「先頭打者の福田を含めて、この日のオリックスの各打者は早いカウントから直球を積極的に打ちにいっていました。ベンチの指示でしょう。佐々木朗希が降板した五回まで対戦した延べ23人の打者のうち、ファーストストライクの直球をスイングした打者は10人。セカンドストライクまで含めれば12人。徹底していました。相手の明らかな直球狙いに、佐々木朗希は少し力んだように見えた。この日もMAXは自己最速タイの164キロをマークしましたが、余計な力が入れば制球に乱れが生じるし、球のキレにも影響します。5四死球、被安打6の遠因になった。加えて、やはり二回の判定を巡る球審とのトラブルも投球に影響した印象です。直後の三回に先頭の福田に死球を与え、四回も2四死球、五回は2連続四球。今季初登板から前回登板までの今季4試合で計31回を投げてわずか3四死球だった佐々木朗希がここまで制球を乱したわけですから、球審に注意されたことによる精神的な影響がなかったとはいえません」

 毎回走者を出しながら、それでも失点は五回の無死満塁から投ゴロ併殺の間の1点と、2死三塁から4番・吉田正に打たれた左中間二塁打による1点だけに抑えた。

「この日は奪三振も4にとどまった。思うように空振りが奪えず、制球も定まらない中で試合をつくって勝ち星も手にしたわけですから、立派ですよ。こうやって経験値を積んでいけば、ますます手の付けられない投手に成長していくはずです」(前出の橋本氏)

スライダーの増加

 そんな佐々木朗希のこの日の投球は、ほぼ直球とフォークだけで完全投球をした10日、17日とは違い、スライダーの割合がやや多かった(90球中8球)。

 二回の杉本に対しては、初球カーブのあと、2球続けてスライダーを投じている。この日は、オリックス打線が積極的にストレートを狙ってきたこともあり、バッテリーの工夫が見られた。球界OBが言う。

「キャンプ中には投球に緩急の幅をつける目的で、カーブの精度アップに取り組んでいました。ただ、スライダーやカーブは、フォークと比べると制球が安定しておらず、本人もまだ試合で多投できるレベルに達していない、と考えているようです。とはいえ、あくまで佐々木朗希の場合はフォークが良すぎるのであって、スライダーやカーブを全く使えないレベルでもない。スライダーやカーブの使い方次第で、投球の幅が広がるだけでなく、フォークの多投による肩肘への負担軽減にもなるはずです」

 佐々木朗希は、体への負担を考慮して極力、全力投球を避け、力の入れ具合を8割前後にセーブして投げているといわれている。しかし平均球速が160キロに迫る直球を投げ続けるだけでも体への負担が大きいだけでなく、フォークの多投が肩肘の故障につながりかねないとの指摘が少なくない。

 前出の橋本氏は、「フォークは腕を強く振りながら、ボールを抜いて落とすため、肘への負担は大きい」と言っているし、フォークを武器に通算215勝を挙げたロッテOBの村田兆治氏も週刊ポスト誌上で、「気になるのはフォークの配球が多すぎること」「オレは決め球として1試合で12~13球しか投げなかった。やはりフォークは腕に負担がかかるから、できるだけ投げる数を少なくしていた」と指摘。カーブなど縦に落ちる変化球の習得を勧めた。

■「指先の感覚が抜群」

 実は佐々木朗希は、カーブやスライダー以外にも、プロ入り後にほとんど投げていない「魔球」があるという。前出の球界OBが言う。

「大船渡高時代は、力の入れ具合を抑えつつ、チェンジアップを投げていましたが、本人がスライダーなどと同様、多投できる段階にないと考えていて、プロでは昨季のヤクルトとの交流戦などでお試し程度に投げただけ。ただ、高校時代の佐々木朗希をチェックしたメジャー関係者は、『ササキは非常に指先の感覚が優れている。変化球の中で最も優れているのはフォークだが、チェンジアップも高校生離れしているから、十分に使えるボールになる』と太鼓判を押していました。チェンジアップは、フォークよりも肩肘への負担が小さいとされる。ストレートとフォークだけで十分に相手をねじ伏せる力はありますが、故障リスクを減らすためにも、チェンジアップは有効かもしれません」

 井口監督は試合後、来週に予定されている佐々木朗希の次回の登板について、疲労を考慮した上で考える方針を示した。シーズン中だけにいきなりの大幅なモデルチェンジは難しいが、MAX164キロの直球とフォークのほかに“宝刀”を隠し持っているとすれば、とんでもないポテンシャル。この先、ありとあらゆる記録を塗り替えても不思議ではない。

*この記事の関連【動画】もご覧いただけます。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 2

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  3. 3

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  4. 4

    だから桑田真澄さんは伝説的な存在だった。PL学園の野球部員は授業中に寝るはずなのに…

  5. 5

    ドジャース大谷 今季中の投手復帰は「幻」の気配…ブルペン調整が遅々として進まない本当の理由

  1. 6

    我が専大松戸の新1年生は「面白い素材」がゴロゴロ、チームの停滞ムードに光明が差した

  2. 7

    僕が東都大学リーグで過ごした4年間の濃ゆい思い出…入れ替え戦史上初の3試合連続本塁打を放った

  3. 8

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に

  4. 9

    打撃絶不調・坂本勇人を「魚雷バット」が救う? 恩師の巨人元打撃コーチが重症度、治療法を指摘

  5. 10

    ドジャース大谷「WBC不参加」懸念は消えず…本人は乗り気も「代表サイド」と「カラダ」が抱える大問題

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 3

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  4. 4

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  5. 5

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  1. 6

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  2. 7

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  5. 10

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ