濡れたボールをそのまま投げる胸中…35歳で知恵と工夫が必要と痛感
あれは横浜に移籍して2年目、1999年のシーズンだった。
雨の日に神宮球場で投げていたときのことだ。使っていたボールは結構、グラウンドを転がっていて濡れている。内野手がボール回しをして、最後に三塁手の進藤達哉のところへ。進藤は気を利かせて濡れたボールを交換しようとしたため、「しんちゃん、(交換しなくて)いいから。そのまま、よこして」と言った。
すると進藤は「濡れてますけど、いいんですか?」とニヤニヤ。まったく、バッターに意地悪なことをしようとするんですね、と言わんばかりだった。
当時、日本のプロ野球界にはツーシームが浸透しつつあった。速い球が打者の手元でシュート回転しながら沈むボールのことだ。
打者に近い位置で小さく変化するから、バットの芯を外す効果がある。私は35歳。新たなものに挑戦したくなる、というか、せざるを得なくなるころだ。
濡れているボールは勝手に動くから、ツーシームのような動く速球になり得ると思ったのだ。