巨人・坂本の“中絶トラブル”をスポーツメディア完全スルー…自粛と忖度で自壊ますます加速

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「メディアの腰砕けが選手の倫理観にも悪影響を与えている」

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が呆れかえる。

阪神のような『人事を報じたら出禁』というやり方はあまりにも幼稚で情けない。プロの世界はどんな形であっても、報道され、取り上げられることに価値がある。そもそもプロ野球の人気が頭打ちという状況で、スキャンダルや報道にきちんと対応しなければ、余計にプロ球団としての資質が疑われることになる。そして、それに従うメディアも情けない。批評性があってこそメディア。しかし、そもそもその批評性を最も欠いてきたのがスポーツメディアですからね。五輪報道もそうですが、スポーツは批判すべきじゃないというスタンスが根付き、自粛・忖度ばかり。それによって選手は増長する。メディアの腰砕けが、選手の倫理観にも悪影響を与えているのです」

 象徴的なのが、巨人坂本勇人(33)の中絶トラブルだ。破廉恥でおぞましい女性軽視の言動を繰り返した挙げ句、相手女性が自殺未遂を起こした、と文春オンラインに報じられた一件だ。すでに双方で示談が済んでいるという理由からか、現時点で球団から坂本にペナルティーはなく、21日のDeNA戦にも堂々と試合に出ていた。

 SNSやネット上では「鬼畜の所業」と糾弾され、フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏も自身のユーチューブチャンネルで「大アウトでしょ」と批判。同時に、「なんでスポーツ紙が、僕の知っている限りではこれのご乱行を書かないんですか? 現役を退きかけているような三流、四流なら書くのになんでジャイアンツのトップ、キャプテンをやっているすごいスター選手だと系列が別なところであってもスポーツ紙って書かないんですか?」と疑問を投げかけている。

 実際、今月初めに卓球リオ五輪団体銀メダリストの吉村真晴(29)の不倫が報じられた際は一斉に後追い報道を行ったスポーツマスコミが、坂本に関してはスポーツ紙も地上波テレビ局も完全スルー。過去の女性トラブルを含めて厳しく報じている雑誌メディアに比べると、その忖度ぶりが際立っている。

■「羽生引退」スクープ批判がトラウマに

 彼らのそんな弱腰に拍車をかけているのが、コロナ禍だ。プロ野球12球団の多くは新型コロナウイルスの感染予防を理由に、今も厳しい取材規制を行っている。選手の隣について取材を行う「ぶらさがり」は原則禁止。球場では、リモートを含め球団がお膳立てした環境でしか取材ができなくなった。その輪から外されれば、選手の肉声を聞くことすら難しい。取材される側とする側の力関係がこれまで以上に広がり、される側の優位性が増している。メディアが球団の顔色をうかがい、忖度せざるを得ない状況が加速しているのだ。

 スポーツ紙のベテラン記者が自嘲気味に言う。

「昔は、球団幹部の自宅へ通い詰める“夜討ち朝駆け”や地道な関係構築でネタやスクープを取ってきた。しかし、今やそのスクープだって批判の餌食になる。今年7月の(男子フィギュアスケートの)羽生結弦の引退表明がいい例だ。羽生サイドが、翌日に『決意表明の場』とする会見を行うと発表した当日の深夜、日刊スポーツが他紙に先んじて『現役引退』と報道した。いわばスクープだったが、ネット上では『フライング報道に何の意味があるのか』『羽生選手に失礼』と批判が殺到した。羽生本人も翌日の会見冒頭で『先の一部報道であった通り、いろいろなことを言われてしまいましたが……』と苦言を呈したものだから、批判は過熱。スクープにリスクはあっても、メリットがなくなってきた。そこに忖度が加われば、記者のモチベーションも上がるはずがない」

 スポーツ界そのものの劣化も進みそうだ。

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