プロ球団のコーチが新人自主トレを見ながらひと足早い「品評会」を始めてヒヤヒヤ
「もう少し、バットスイングは鋭くてもいいんじゃないか?」
「ま、守りが良くて取ったって聞いたけど、それにしちゃ、スローイングもグラブさばきもいまひとつだな」
先日のこと。スタッフミーティングのついでか、コーチ数人が新人の合同自主トレを遠目に見ながらこんな話をしていた。彼らの視線の先には、オレが担当した高校生内野手がいたから、まったく気が気じゃなかったよ。
そもそもオレは、それほど高く評価していたわけじゃない。学校での練習を1回、練習試合を1回チェックして、高校生にしちゃ、足と肩がまあまあだった。なのでリポートには「育成でどうか」って書いたんだ。
ところが、部長やエライさんが見に来た昨夏の地区大会で大活躍。本塁打を打ったうえに、遊撃手としてファインプレーを連発したもんだから、エライさんなんて小躍りしながら、「これは5位以内では取らないと。他球団も見ているし、育成まで残ってませんよ」なんて大はしゃぎさ。
結局、ウチがドラフト下位で指名。担当スカウトはもちろんオレさ。コーチたちにはくだんの高校生内野手が、よほど物足りなく映ったんだろう。しまいにはオレにも聞こえるような声で、「ちょっと厳しいんじゃないか……」って言い出した。