大谷翔平“魔球スイーパー”駆使し2勝目も…初の「サイ・ヤング賞」狙いに足りないもの
2021年以降、後半戦のパフォーマンス低下
自己最多の15勝(9敗)をマークした昨季序盤の登板では直球の平均球速が155キロを超えるのも珍しくなかったが、後半は球速の低下が目立った。特に9月以降は150キロ台中盤に届かないケースが多かった。
大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏がこう言った。
「大谷はリアル二刀流で起用された2021年以降、それほど極端ではないにしろ、後半戦のパフォーマンスが低下しています。特に昨季はストレートに伸びがなく、奪三振率は前半戦の35.4%から後半戦は30.7%に下がり、逆に与四球率は6.3%から7.0%と悪化した。今季はスイーパーを高く評価されていますが、昨季のようにシーズン後半に球威が落ちれば、魔球の威力も半減してしまう。大谷のスイーパーが効果的なのはストレートの球威があってこそです」
今季は開幕前からWBCで投打の二刀流としてフル回転したうえに、今季から導入された「ピッチクロック(投球間隔制限)」の負担も大きい。見切り発車のまま開幕を迎えたためか、先のマリナーズ戦ではメジャーで初めて投打のピッチクロック違反を犯した。
大谷はマ軍戦での違反もあり、この日の登板を前に投球フォームを修正。球審や相手打者に投球動作の始動を分かりやすくするためか、レンジャーズのサイ・ヤング賞右腕デグロムら多くの投手が実践している左足を一足分下げてから投球動作に入るフォームを取り入れた。日頃の投打の調整に加え、ピッチクロックへの対応に追われて心身ともヘロヘロ。普段はセットポジションの大谷が「ワインドアップで投げようかな」と皮肉交じりにこぼしたのは、それだけ心身の負担が大きいからに他ならない。
「ピッチクロックは多少なりとも大谷の投球に影響しているのでしょう。今季2試合で計9四死球で、四球率は5.25(21年3.04、22年2.38)。過去2年と比べても制球が安定しないのは、投球間隔制限を意識して投げ急いだり、自分のペースや間で投げられないからではないか。大谷はメジャー投手の中でも投球に時間をかける方ですからね。WBCに向けて春先から急ピッチで調整を進めてきたうえに、ピッチクロックへの対応も余儀なくされれば負担も増す。これまで以上にシーズン後半にパフォーマンスを発揮しにくくなるかもしれません」とは前出の友成氏だ。