驚愕の「防御率0.00」佐々木朗希はどう攻略? ヒントは大魔神をカモにした“落合打法”にあり
バットのヘッドを立てる
高校時代はまだフォークの精度が高くなかったこともあり、速球対策に重点を置いたことが奏功したようだ。プロ4年目の今ではフォークの精度も割合も上がったが、「抜けたフォーク」が高めに入ることがあり、これが「狙い目」になるという。
「目つけを高くしても、160キロを超える高めの速球を打ち返すのは難しい。メジャーリーガーの大谷にしても、吉田正にしても、スイングの軌道がアッパー気味の打者は、低めは強くても160キロ級の高めは苦手。高めには打ち方があるんです」と中尾氏がこう続ける。
「バットのヘッドを立てて打つことです。これができれば、最悪でもファウルで逃げることはできる。それとコンパクトに振ること。といっても、小さく振るわけではなくて、トップから後ろ側の肘が腹の近くを通る感覚。肘が体から離れないように振ることが大事。それと、前の肘を上げないこと。コンパクトに振ろうとすると、ボールを長く見ることになる。佐々木の生命線であるワンバウンドになるフォークも見極められる可能性が高まります」
■ゾーンの半分捨てる勇気
ヤクルトOBで野村克也監督の「ID野球」の薫陶を受け、巨人でバッテリーコーチなどを務めた秦真司氏はこう見る。
「今季の配球チャートを見ると、低めのボール球を振らせた三振が多い。決め球のワンバウンドになるフォークを振っている間は攻略できない。といっても、フォークですら150キロ近いのだから、直球に見えるし、見極めるのは非常に難しい。ベルトより低い球は全て捨てるくらいの思い切りが必要。目線を上げてベルト付近から胸元までとか、ゾーンを小さくして待つことが大事になる。データでは1試合で20球はボール球を振っている。もし我慢できれば、1イニングは早く降板させられる。攻略法ではないが、勝機は広がる。球数制限のある投手というのが、佐々木の唯一の弱点ですから」
落差の大きい高速フォークの攻略という意味では「大魔神」といわれた佐々木主浩氏(元横浜)を通算.444と打ち込んだ落合博満氏(元巨人など)の打法にヒントがあると指摘する。落合監督時代に中日のコーチを務めた秦氏が続ける。
「落合さんは現役時代、佐々木と対戦する時は『低めのストライクは見逃し三振OK』と決めていたそうです。逆に高めの直球と高めに抜けたフォークは打ちやすいから、これを狙ったと。目線を上げて低めを捨てる。膝元に直球を投げられたら諦めるそうですが、なかなか徹底できないことではある。だからこそ、誰も打てなかった大魔神から4割以上も打てたのです」
「高」か「低」か──。どちらか半分を完全に捨てる勇気が必要なようだ。