トランプや小トランプに悩まされる米球界 観客約4割が民主党支持で分断も…
例えば、2021年4月にジョージア州でアフリカ系アメリカ人の投票権に関する州法が可決された際、機構はアフリカ系アメリカ人に不利な影響を与えるとして不満を表明した。さらに、翌年のオールスター戦の開催地をジョージア州アトランタからロサンゼルスに変更し、抗議の姿勢を示した。
これに対して共和党上院議員のランド・ポールは「投票するのに身分証明書の提示が必要というのが人種差別だとしたら、平均100ドルを超えるヤンキースの入場券も差別的」と批判し、共和党として野球をボイコットするよう呼びかけた。
あるいは、テキサス州知事でトランプとも親しいグレッグ・アボットは、LGBTQに対して反対の立場をとっている。そのため、テキサスを本拠地とするレンジャーズは、LGBTQへの理解の促進を図る「プライドデー」に、運動の象徴である虹色の帽子を着用しないことを決めている。
大リーグ30球団のうちレンジャーズのみが独自の行動をとることは、それだけテキサスの保守化が進んでいることを示している。
現在、トランプ化した共和党は、約4割が民主党を応援している観客の批判の対象となっている。そして、思わぬ形で共和党を支持する経営陣と民主党寄りの観客の対立が起きれば、球界の分断が進みかねない。球界がトランプでも小トランプでもない、伝統的な保守政治家の登場を待ちわびるのは、こうした事情によるのである。