「相撲が正しい方へ行かないんだ」北の湖の不満も押し切った栃若の“おま言う”改革
名古屋場所が7月9日に始まる。新大関霧島の登場もあってにぎわいそうだが、今の大相撲人気がどこからくるのか、まだよく分からない。
立ち合いに待ったをした力士が、正面の審判長にペコンと頭を下げるのがかわいいというファンもいる。いろんな見方があるものだと思う。
日本相撲協会は過去に何度も、立ち合い正常化に取り組んできた。特に大きかったのは春日野理事長(元横綱栃錦=円内)時代の1984年、手をついて立てと命じた時だ。当時はほとんど手をつかなかった。しっかり腰を割って静止することなく、膝を曲げた反動で立つ。相手をじらすのが見え見えの待ったもあった。
今後は少なくとも一方の手をついて静止し、呼吸を合わせて立てという。両手をチョン、チョンと形だけつくのも認めない。
当たりの角度が変わるし、当たる力やスピードも落ちる。力士たちは不満たらたらで、横綱北の湖が朝稽古の後に言った。
「理事長の現役時代のビデオ見てみな。手なんかついてないよ」
中腰のまま立つまねをして、「こんなんだよ」と口をとがらせた。
だが、春日野理事長と協会ナンバー2の二子山親方(元横綱初代若乃花)は「今やらなくちゃ、相撲が正しい方へ行かないんだ」と意に介さない。今なら「おま言う(おまえが言うか)」である。「あんた方に言われたくない」とみんな思っていたが、逆らえない。何とか適応しようとした。