バウアー激高上等! DeNA25年ぶりVへ“劇薬”を生かすも殺すも首脳陣とフロント次第
サイ・ヤング賞投手がキレて、吠えた。
1日の中日戦で先発したDeNAのトレバー・バウアー(32)である。
この試合、序盤から野手の度重なるミスに足を引っ張られ、五回を終えた時点で2失点(自責1)。審判の判定に不満そうな態度を取るなどイライラを募らせた右腕は、六回2死一、二塁の場面でついに堪忍袋の緒が切れた。
岡林の二塁ゴロ(結果は内野安打)の際、内野陣が連係ミスを犯し、チェンジのはずが一転、2死満塁のピンチに。するとベースカバーに入った本塁付近で放送禁止用語を連発したのだ。
しかし、キレるだけで終わらないのがバウアーだ。次打者の高橋への初球にこの日最速の159キロの直球を投げこみ、その後も158キロを連発。投ゴロに仕留めると、一塁手のソトに対して「どけ!」と言わんばかりに一塁へ猛ダッシュ。自らベースを踏んでピンチを切り抜け、ベンチに戻る際に再び「F○CK」と吠えた。
さすがにベンチも苦笑いを浮かべるしかなかったが、降板後は一転、ベンチの最前列でチームを鼓舞。攻撃陣はそんな助っ人の勢いに乗せられたのか、八回に2-2の同点に追いつき、なんとか引き分けに持ち込んだ。
試合後、冷静さを取り戻したバウアーは「正常じゃなかった」と釈明しつつ、「優勝するチームの野球ができていなかった」と指摘した。
■選手がプレーで熱くなるのは、ファンなら大歓迎
チームは交流戦で優勝し、一時は阪神を抜き去り首位に躍り出たものの、前日まで4連敗。まして相手は下位に低迷する中日だ。チームとして奮起するべき試合で野手がお粗末なプレーで足を引っ張った。バウアーでなくても、投手はたまったものではない。
だからか、三浦監督はバウアーに理解を示すようなコメントをしていたし、ネット上でも「あれはキレて当然」などと理解を示す書き込みが目立った。プロ野球ファンの松崎菊也氏(戯作者)は、「仲間内であっても『しっかりせんか!』という叱咤は必要ですよ」と、こう続ける。
「もし、バウアーが『ベイスターズだもん、仕方ないよ。ドンマイ』なんて態度だったら、見ている方も気持ちが悪いったらありゃしません。近年は日本代表としてプレーする機会が増えたせいか、選手同士で仲良くなり、乱闘もほとんどなくなった。どこを見ても、お行儀のいい選手ばかり。でも、野球はなんだかんだ言って勝敗を競う戦いでもある。なれ合いみたいな姿を見せられるよりは、ミスをしたら『何やってんだテメー!』とやってくれた方が、ファンだって面白い。後輩を殴ったり、ベンチで冷蔵庫を殴って壊したりするのは論外でも、プレーで熱くなるのは大歓迎ですよ」
そんな破天荒な助っ人右腕は、1998年以来25年ぶり優勝のキーマンと言って間違いない。米インディアンス時代の2016年にはリーグ優勝を果たし、ワールドシリーズでは2試合に先発した。「優勝するチームの戦いができていなかった」という指摘ももっともで、チームは2位になった昨季も、8月は18勝6敗と大きく勝ち越した一方、3、4月は10勝15敗と開幕ダッシュに失敗。リーグ屈指の戦力で勢いに乗れば強さを発揮するものの、チーム状態が悪くなるとミスが続出してズルズルと落ちる……というケースは少なくない。球団OBが言う。
「DeNAのチームカラーもある。98年優勝時の権藤監督は個々の選手の自主性を尊重、能力を引き出すことに成功した。ただ、チームは25年も優勝から遠ざかっている。球際や勝負どころで脆さが出るのは選手が勝ち方を分かっていない部分があるのも確か。三浦監督は先頭に立って引っ張るタイプのリーダーではないし、主将の佐野もどちらかといえば背中で引っ張る方。バウアーは実力はもちろん、勝ち方も知っている。感情をむき出しにする言動にチーム全体が乗せられ、うまく回っているのが実情です」