湘南乃海桃太郎は野球少年「エースで4番」の叩き上げ 十両をわずか3場所で通過
湘南乃海桃太郎(25歳・高田川部屋・前頭14枚目)
かつての野球少年が目指すものとは──。
野球経験者の父と祖父の薫陶を受けて育ち、中学生まで野球一本。将来の夢はプロ野球選手。「エースで4番」として活躍し、野球強豪高から推薦の声もあったというが、ケガが多く、中学3年で野球の道を断念。父親から「プロに行けたとしても、一軍では活躍できない」と言われたことで諦めがついたという。
そこで父親から相撲を勧められ、高田川部屋を見学。角界でも有数の猛稽古で鳴らす部屋の風景に目を丸くするも、「こういう厳しい雰囲気の方がいい」とむしろ気に入り、入門を決意。中3の夏からは父親と近所の公園で四股などの基礎稽古に励んだ。
2014年に15歳で入門。16年に幕下昇進したが、ここからが長かった。22年まで6年間、十両の壁を破れなかった。
「相撲未経験ながら、入門した時点ですでに190センチ、140キロの立派な体格でした。十両まであと一歩というところで負け続けていたが、本人も周囲も、どこか『まあ、いずれは上がれるだろう』と楽観的に捉えていたのではないか。相撲ぶりにも、そんな意識が垣間見えた。あの長身で左を差し、腕を返せば相手の腕も上がってしまう。そこで右まわしを掴めばそうは負けないはずですが、やはり『自分の型ならいつでも勝てる』と思っていたのでしょう。型に持ち込んでからの攻めが遅く、逆転されることもしばしばでした」(一門の親方)