「夢に相撲が出てきて目が覚めるんすよ」曙が見た新大関全休の奈落
名古屋場所はせっかく東西にそろった大関が、2人とも不在で初日を迎えた。場所前に貴景勝が両膝のけがで休場を決断し、秋場所はまたかど番になる。初日の9日朝には新大関霧島が右肋骨のけがで休場届を出し、4日目から出場する苦しい登場となった。
1992年名古屋場所、新大関の曙が全休している。場所前に高熱でダウンしたと思ったら、翌日に稽古で右足小指の付け根を骨折した。
「(今場所は)諦めたから来場所のことだけ考える」と割り切って治療とリハビリに励んだものの、秋場所の大関デビューはいきなりかど番だった。4日目まで3勝1敗と白星を先行させながら、5日目から5連敗した。相手のうち3人(貴闘力、豊ノ海、貴花田)が藤島部屋(のちの二子山部屋)と、その後の構図が表れているが、締め込みを変えても効果はない。
「夜もよく眠れない。夢に相撲が出てきて目が覚めるんすよ」と明かし、「その分、昼寝はできるけど」と続けた冗談も寂しかった。
だが、翌日から奇跡的に立ち直る。「大関を守るんじゃなくて攻める」気持ちに切り替え、11日目に貴ノ浪を一気に押し出すなど6連勝して危機を脱した。「初土俵から一番苦しい場所だった」というのも当然だろう。