ソフトB悪夢の12連敗生んだ「金満80億円補強」…圧倒的V候補がBクラス転落寸前という惨状
WBCに選手派遣渋り、パ5球団からは怨嗟の声
10ゲーム差をつけるどころか、現状は3位を死守するのがやっと。首位のオリックスに7ゲーム差、2位のロッテにも4ゲーム差と離され、4位の楽天には3.5ゲーム差に迫られている。
1998年の日本一監督、評論家の権藤博氏が言う。
「その補強が問題だと思う。私が横浜を率いていたときも、長嶋巨人が毎年のように大型補強を敢行した。同じセのライバル球団からFAなどで主力や外国人選手を引き抜くやり方に、当時の横浜の球団社長は『戦略も品もない、あるのはカネだけというチームには、順位でも対戦成績でも負けるな』とチームにハッパをかけたものです。
私も選手も同じで『負けてなるものか』と気合が入った。こういう、『ナニクソ』という気持ちは、精神論だとバカにはできない。今季のパ・リーグがまさにそうで、5球団が目の色を変えてソフトバンクに向かってくる。迎え撃つ方は大変です」
80億円大補強に加え、ソフトバンクは3月のWBC日本代表に選手の派遣を渋ったと言われている。当初メンバーに名を連ねたのは近藤健介、周東佑京、甲斐拓也の野手3人のみで、負担の大きい投手はゼロ。他11球団から「非協力的」と怨嗟の声が上がり、対照的に山本由伸と宮城大弥という左右の大黒柱に加えて中継ぎエースの宇田川優希が選出されたオリックスの福良淳一GMは実際、日刊ゲンダイの取材にこう答えていた。
「そうだよねぇ……(好投手の)大関とか藤井とかいるけど、そのへん(なぜメンバー入りしていないのか)は分からないからね。そこはボクには何とも言えませんよ」
不満をぐっとのみ込んだような表情だった。
これでもかと大枚をはたきながら、バカ高い年俸に見合った働きをしているのは近藤、有原、オスナくらい。6月には昨季限りで“戦力外”としたデスパイネと再契約したが、まったく戦力になっていない。
フロントの目利きの悪さがチームの足を引っ張っているわけだが、問題はそれだけにとどまらない。ソフトバンクはこれまで豊富な資金力を武器に戦力を整備しつつ、同時に豪華な三軍施設をつくるなどして若手育成にも力を入れてきた。今季の補強の失敗でそのチーム強化の2本柱も崩れつつある。
■戦力が有り余る弊害
「補強が厄介なのは、それだけの資金を投じるわけですから、取った選手を使わざるを得ない。監督の用兵、采配の手かせ足かせになるケースが出てくる。当然、既存の中堅、若手選手のチャンスがそれだけ減るということでもある。
そうやってあぶれてしまったのが、現役ドラフトで阪神に行った大竹耕太郎であり、FA近藤の人的補償で日本ハムに移籍した田中正義でしょう。その2人は新天地で見事な活躍を見せている(大竹=7勝1敗、防御率1.48。田中=2勝2敗14セーブ、防御率2.40)。こんな皮肉もありませんよ。
チームの勝敗の責任を負うのは監督ですから、藤本監督が矢面に立つのは仕方がないとはいえ、シーズン前にあれだけの補強をしてもらい、とんでもないプレッシャーがかかったのは確か。オーナーから“優勝して当たり前”のように言われたらなおさらです。私は今年のソフトバンクのようなチームで監督をやるのはイヤですね。監督でありながら、自分のやりたいようにできない。これはキツイ」(前出の権藤氏)
4年連続日本一からわずか3年、ソフトバンクに「王者」の面影はなくなりつつある。