18年ぶりVへ導いた岡田監督の選手操縦術 6.24佐藤輝明“二軍強制送還”に見えた徹底「信賞必罰」
岡田彰布監督が6度、甲子園の夜空に舞った。
阪神は14日の巨人戦に勝ち、2005年以来、18年ぶり6度目のリーグ優勝を球団史上最速で決めた。
「甲子園のたくさんのファンの前で絶対決めようと思っていた。みんな、そういう気持ちで行ったので、本当にうれしく思います」
こう言って、喜びを噛みしめた指揮官が就任1年目にしてチームを頂点に導いた舞台裏を探った。
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「今日は矢野(燿大前監督)が来てるんか」
岡田監督はシーズン中、何度か前任者の名前を口にした。
「専門の守備位置がないから守備のミスが多い」
「クリーンアップ打つやつをこんなにコロコロ替えてたらアカンわ」
岡田監督は昨年までの評論家時代、ネット裏から阪神の試合をチェックし続け、チームの構造的な欠陥を把握。昨オフの監督就任直後には、前任者との違いを明確に打ち出した。「超積極」をスローガンに掲げた矢野時代とは対照的に「守りの野球」を掲げ、ポジションが流動的だった大山悠輔(28)を一塁、佐藤輝明(24)を三塁に固定。遊撃の中野拓夢(27)を二塁にコンバートした。中野は肩に不安があり、遊撃守備では比較的、前にポジショニングを取ることが多かった。それが失策やミスの呼び水となったと、見抜いたうえでの配置転換だった。
■ベンチ主導で勝ち方を植え付け
作戦面もガラリと変えた。矢野監督時代は極力、ベンチのサインで選手を縛らず、自主性を尊重した。初球から積極的にスイングし、盗塁を仕掛けるのを良しとすることで、選手の能力を引き出そうとしたが、岡田野球はあくまでベンチ主導だ。
「『普通に野球をやったら勝てる』『少し変えれば勝てる』というのが口癖。選手個々の能力は高くても、阪神ナインは勝ち方を知らないと考えていた。だから、今季は犠打、エンドランはもちろん、守備位置、捕手の配球も含めて岡田監督自らサインを出している。そうすることでベンチの責任を明確にするとともに、選手は勝ち方を覚えていった。交流戦ではロッテの佐々木朗希との対戦で『見逃し三振はOK』と命じて勝利したのがその象徴。こうしたことは、矢野監督時代にはあまりなかったことです」とは、阪神OBだ。
岡田監督は四球に対してプラス査定を球団に要望。1点を1.2点に増やしてもらい、七回以降の四球は安打と同等になった。選手には「四球を選べ」とは言っていないが、査定の変更については開幕前に伝えた。それによって、今季のチーム四球数452はリーグトップで、15試合を残して昨季の358をすでに大きく上回っている。盗塁も基本的にベンチが「ゴー」のサインを出したうえで仕掛けるという。こうした岡田野球がわずか1年足らずで浸透し、優勝という形で結実した。
選手に厳しく接することも岡田監督ならでは。中でも、若き大砲・佐藤輝明に対する姿勢に顕著に表れている。
6月24日のDeNA戦(横浜)の直後、岡田監督は佐藤輝の二軍降格を決めた。3連戦の2戦目前というタイミングで二軍落ちを告げられた佐藤輝はそのまま鳴尾浜へ強制送還。翌25日の二軍戦に出場した。3連戦中の降格に周囲は目を白黒させていたが、その裏では信賞必罰が徹底されていた。さる球団OBがこう言う。
「佐藤輝は二軍落ちするまで6月の月間打率が.179、1本塁打と低迷。岡田監督は24日の試合でスタメンから外すとともに、コーチ陣に対して『どうなってるんや!』と激怒した。佐藤輝は試合前にコーチからスタメン落ちを告げられ、ふてくされたような態度を見せたそうですが、それを伝え聞いた岡田監督は『だったら、もう鳴尾浜に行かせろ』と二軍行きを命じたというのです」