大谷翔平「過度の年俸後払い」を批判せず…道義や倫理を問わない米国人の不思議な気質
「1998年、米国はマグワイアとソーサの本塁打王争いに沸いた。それまでの最多本塁打記録はロジャー・マリス(ヤンキース)の61本。マグワイアは70本、ソーサは66本塁打を放ち、マリスの記録を抜いた。派手な打ち上げ花火の競演に全米が熱狂しました。2人とも筋肉増強剤(ステロイド)の使用がウワサされていましたが、当時はルール上、禁止されていたわけではなかった。ルール違反をしているわけではないのだから問題ではないし、ファンを魅了するパフォーマンスを発揮しているのは称賛に値するというのが米国人のスタンスなのです」
後年、ソーサが使用したコルクバットは明らかなルール違反だが、98年当時のステロイドは事情が異なる。ルール違反ではないのだから、人々は熱狂するのは当然というのだ。
■「ルールに問題あり」と捉えるのが米国の考え方
野球文化学会会長で名城大准教授の鈴村裕輔氏はこう言う。
「例外のない規則はないということわざがあるように、どんな規則にも例外はあります。規則の範囲で利益を生む方法を考えたのであれば、知恵を働かせた結果、イノベーションをもたらすと米国では受け止められる。常に競争で、生き馬の目を抜く米国社会では、網の目から漏れる規則やルールの方に問題があるととらえるのです。社会を安定させるための法が日本だとすると、法は動かさないと発展しないとみるのが米国。大谷の極端な後払いがきっかけとなって、ぜいたく税に関する規定が変わる可能性はあります」