初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」
「最初は人の肩を借りなければ歩けなかったけど、横綱(照ノ富士)に『勝ち負けではなく、最後まで出るのが大事だ』と言われた瞬間、歩けるようになった」
昨25日の一夜明け会見で、こう振り返ったのが、3月場所を制した新入幕の尊富士(24)だ。
14日目の朝乃山戦で右足首の靱帯を損傷したものの、出場を選択。千秋楽はひたすら前に攻め続けて豪ノ山を撃破し、自身初Vを110年ぶりの新入幕優勝で飾った。
この日の会見では笑みを絶やさず、地元津軽弁で「さっぱどしたじゃ(すっきりした)」と、喜んだ尊富士は、伊勢ケ浜部屋所属。先場所を制したのも、同部屋の横綱照ノ富士だった。昨年9月場所は熱海富士が決定戦で大関・貴景勝に敗れたものの、優勝同点で賜杯にあと一歩と迫るなど、伊勢ケ浜部屋勢の躍進が顕著だ。
3月場所中に元幕内の照強が引退会見を行ったが、それでも横綱を筆頭に幕内5人、十両1人。関取だけで総勢6人だ。尊富士は新入幕で、熱海富士もまだ幕内経験は5場所。なぜ、伊勢ケ浜部屋は次から次に新鋭が出てくるのか。
親方のひとりは「相撲王国の青森県を押さえているのがデカい」と、こう話す。
「今は新弟子が集まらず、大相撲受難の時代。就職場所といわれる3月場所の新弟子検査は、今年は受検者27人で、過去最少だった昨年の33人をさらに下回った。それでも、伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は出身地の青森県に地盤を持っている。地元の情報はすぐに入ってくるし、地縁もあって勧誘しやすい。部屋に横綱がいるのも、スカウトに有利です」