大社(島根) 石飛文太監督の本音と建前「...高校野球って綺麗な事ばかりじゃないですよね?」
「まあ……高校野球って綺麗な事ばかりじゃないですよね?」
ーー石飛監督は2020年に母校の監督に就任。チームを強くするために、どのようなことを心がけたのですか。
「まずは子どもたちを取り巻く環境の整備ですね。まあ……高校野球って綺麗な事ばかりじゃないですよね? 例えばOBが色々言ってくるとか。うちも島根県内では伝統校と言われていますし、ひがまれることもある。外部から『なんで選手を揃えて勝てないんだ』という声もあったんです。OBがそれを言うこともあった。僕が就任する前はいわゆる“ヤンチャ”な子も多く、野球部が学校から応援されるような感じでもなかった。保護者から色々言われることもありました。その3つ、OB、学校、保護者との関係を良くしよう、と」
ーー現在はどのような状況ですか。
「OBが文句を言うとか、保護者が学校に何か言ってくるとか、ここ2年間はゼロ。これはどこの学校でもあると思うんです。それがゼロになった。これは甲子園に行くより難しいことだと思うんですよ。僕が何かをしたわけじゃないけど、良かったなあと思っています」
ーー何もしていないことはないと思いますが……。
「いや、本当にわからないんです。僕は普通に考えて、普通に出来ることをしただけなんですよ」
ーーでは、監督が部員に接する上で重視したことは。
「真剣に、親目線で考えるってことですね。親なら本気で子どもの将来を考えるし、本気で叱るし、良かったら褒める。エースだから、応援部隊だからとか、区別しませんよ、親ならば。つまり、当たり前のことをしているだけです」
ーー他に部員にどんな指導をしているのですか。
「ウチは『プレッシャーとかいらんて』とは言っています。県内で3連覇5連覇したチームなら、『勝たなきゃいけない』という重圧があるのも当然ですが、ウチはそこまでのチームじゃない。だから『勝たなきゃいけないなんて誰が決めた? お前らが勝ちたいってだけだろ』と。本来、感じる必要のない重圧をかけていたのが、先ほど言った周囲の環境なんですよ。だから、彼らの親御さんたちと面談もします」
ーー面談……ですか。
「冬場に選手全員の親御さんと、ですね。『進路はどうですか、今どんな感じですか』とか。やっぱり、親なら監督がどんな人間かは気になるじゃないですか。そうやって話し合えば、親御さんたちだって不安はなくなる。ただ、面談して『変な人だなあ』なんて思われていたら怖いですけどね(笑)」
(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)