「草魚バスターズ」真板昭夫
<草魚の寿命をまっとうさせたい>
「草魚投入からわずか2年で池の生態系が崩壊したのですから、恐ろしい話です。とにかく、原因の草魚を捕まえてしまおうとしたのですが、池の水を抜くと彼らは泥の中に潜り込んで姿を消してしまう。大沢池は周囲1キロもある大きな池ですから、これでは捕まえようがなく、途方に暮れました」
人間の都合で投入された外来魚を、また人間の都合で駆除していいものか。場所が寺だけに、批判の声もあったという。
「何とか捕らえた草魚を調べてみると、水質の悪化で飢餓状態、成長不良状態でした。私たちの出した結論は、人間の都合で関わりを持った草魚に対し、最小限の数だけ捕獲し、あとの草魚は池の環境を整えて寿命をまっとうしてもらう、というものでした」
自然や文化遺産の保護に難しい理屈はなく、いかにその場所を愛するかが大切だと著者は言う。大沢池は今、地元の人々や学生たち、そして大覚寺の住職たちの努力のかいあって、愛される場所として生まれ変わった。自然との関わり方を考えさせられる本書を携えて、美しく蘇った大沢池を訪ねてみてはいかが。