「振り込め犯罪結社」鈴木大介著
■発生から10年。過激化する振り込め詐欺の実態
“母さん助けて詐欺”と呼称が変わり、警察も撲滅に力を尽くしている振り込め詐欺。しかし、2013年1~9月の被害総額は337億7500万円に達し、過去最悪だった2012年の年間被害総額364億3600万円に届く勢いとなっている。
鈴木大介著「振り込め犯罪結社」(宝島社 1300円)は、振り込め詐欺の原点となった“オレオレ詐欺”が始まった2003年直後から、“加害者”を取材し続けたルポ。得体の知れない組織がどのようにつくられ、10年でどんな変化を見せているのかを明らかにしている。
著者が最初に出会ったのは、大学生の頃に振り込め詐欺の世界に足を踏み入れたという25歳の青年だ。パチスロにはまり、闇金から借りた50万円が返せず、取り立ての男に仕事を紹介すると連れていかれた場所が、振り込め詐欺の“養成所”だったという。5日間監禁され、電源の入っていない携帯電話で“実技訓練”を受ける。うまくできなければ殴る蹴るの暴行を受け、土下座しながら「母さん、金貸してくれ!」とやっているうちに、気分が高揚し始め、やがて“いつでも泣きながら電話ができる”という技を身に付けていったと語る。