「イラストで読む『芸術家列伝』 ボッティチェリとリッピ」古山浩一イラスト、古玉かりほ編、柾谷美奈訳
師は惜しげもなく自らの持てる技を弟子に与えた。師の作品から多くを学んだボッティチェリは、師の表面的な表現から、彫刻的な表現へとさらに自身の絵画世界を深めていく。
聖母をモチーフにした両者の作品を並べて鑑賞すれば、そうした経緯がよく分かる。
やがて大聖堂の壁画制作のためフィレンツェを離れることになったリッピの紹介で、ヴェロッキオの助手になったボッティチェリは、そこで生涯の友となるレオナルド・ダヴィンチと出会う。
ヴァザーリ自らが解説するボッティチェリの作品案内をはじめ、ヴィーナスのモデルといわれるフィレンツェ一の美女・シモネッタとの関係や、隣家に越してきた機織り一家の騒音に悩んだボッティチェリのとった奇抜な行動など。さまざまなエピソードを交えながら、その生涯をたどる。
パトロンだったメディチ家がフィレンツェを追放され、同家の依頼でボッティチェリが取り組んでいたダンテの神曲の挿絵も中断。やがて修道士のサヴォナローラを信仰するようになったボッティチェリは、絵画を放棄し、転落してうらぶれて死を迎えたとヴァザーリは伝える。