【若者たちの現在】ゆとり教育に保守化に草食ブーム。若者たちはどんな時代を生きているのか。

公開日: 更新日:

「『就活』と日本社会」常見陽平著

 日本の企業にも大学生にも長年の慣習と化している「新卒一括採用」システム。表向きは平等を掲げているものの、当の学生たちは有名校優先の「学歴フィルター」や、いんぎん無礼な「お祈りメール」(不合格通知の末尾に「今後のご活躍をお祈り申し上げます」とあること)の横行でやる気をそがれている。

 若者の保守化に拍車をかける元凶といわれる「新卒一括採用」に専門的分析のメスを入れたのが本書。本業は人材コンサルタントだが、40歳で大学院に通い、完成した修士論文をとことん改稿したという。

 著者によれば「新卒一括採用」は例外も多くある「神話」。また大学で学んだ内容をあまり考慮せず、未経験者を大量に採用するのはこの制度の「功」でもある。だが、就職ナビによる大量応募や多段階選抜の物理的負担、不透明な選抜基準などに若者たちは苦しめられるため、求人倍率が少々回復しても「就活」への肯定感が生まれようもないのだとする。要は就活プロセスに多大な摩擦が生じているのだ。しかもネットの発達がこの摩擦に拍車をかけているのが現状。

 近ごろはやりのインターンシップも学生の囲い込みに使われている。平等幻想を捨てるのが企業にも学生にも幸せと説く。(NHK出版 1150円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動