【若者たちの現在】ゆとり教育に保守化に草食ブーム。若者たちはどんな時代を生きているのか。
「『就活』と日本社会」常見陽平著
日本の企業にも大学生にも長年の慣習と化している「新卒一括採用」システム。表向きは平等を掲げているものの、当の学生たちは有名校優先の「学歴フィルター」や、いんぎん無礼な「お祈りメール」(不合格通知の末尾に「今後のご活躍をお祈り申し上げます」とあること)の横行でやる気をそがれている。
若者の保守化に拍車をかける元凶といわれる「新卒一括採用」に専門的分析のメスを入れたのが本書。本業は人材コンサルタントだが、40歳で大学院に通い、完成した修士論文をとことん改稿したという。
著者によれば「新卒一括採用」は例外も多くある「神話」。また大学で学んだ内容をあまり考慮せず、未経験者を大量に採用するのはこの制度の「功」でもある。だが、就職ナビによる大量応募や多段階選抜の物理的負担、不透明な選抜基準などに若者たちは苦しめられるため、求人倍率が少々回復しても「就活」への肯定感が生まれようもないのだとする。要は就活プロセスに多大な摩擦が生じているのだ。しかもネットの発達がこの摩擦に拍車をかけているのが現状。
近ごろはやりのインターンシップも学生の囲い込みに使われている。平等幻想を捨てるのが企業にも学生にも幸せと説く。(NHK出版 1150円+税)