「世界で一番美しい天井装飾」中島智章監修
こうした教会建築物における絵画は、おもに教義を民衆に伝える意図があったが、偶像崇拝が禁じられているイスラム教のモスクや霊廟は人名などのカリグラフィー=文字模様や、幾何学模様、アラベスクと呼ばれる植物模様などで装飾される。
青を基調にしたフレスコ画で装飾された大ドームを含む35ものドームがあるトルコ・イスタンブールの「スルタン・アフメト・モスク」(ブルー・モスク)や、まるで満天の星のように美しいイラン・イスファハンの「イマーム・モスク」、そしてイスラム教建築とキリスト教ゴシック建築の融合から生まれたスペイン・セビリアの「アルカサル」の幾何学模様の装飾で満たされた室内の美しさは別格だ。
一転、ドイツの古都トリアの大聖堂は、こうした絢爛豪華な装飾とは一線を画し、白と青のシンプルな色使いで精緻な漆喰装飾を引き立たせ、清冽な空間を作り上げる。
その他、建築物としての構造そのものの美しさを生かした天井もある。ウェストミンスター聖堂などは、こちらの部類だ。
夏休み、旅先で有名建築物を訪ねたら、忘れずに天井も見上げてみよう。(エクスナレッジ 1800円+税)