親友ポランスキー監督も登場するF1レース映画「ウィークエンド・チャンピオン」
F1といっても一時の人気は跡形もないが、あれはバブル期の例外事象。本当のGPファンにしてみればF1の最盛期はもっと昔の70年代。伝説のジム・クラークは既に事故死していたが、フィッツィパルディ、ヒル、アンドレッティ、そしてクラークと並ぶ「空飛ぶスコットランド人」ジャッキー・スチュワートらがひしめいたあの時代だ。
そんな当時の、華やかでどこかうたかたな姿を印象的に伝えるのが、都内で公開中の映画「ウィークエンド・チャンピオン」だ。
面白いのはスチュワートの親友で映画監督のロマン・ポランスキーが個人的に撮った71年モナコGPの記録映像をちりばめつつ、40年後の現在、ともに老いたる2人が再びモナコでコースを走り、思い出を語るという二重の仕掛けになっていること。おかげで単なるレース映画に限らない、何か不思議にロマンチックな佳品になっているのだ。
そこで注目したいのが71年という時代。土谷英夫著「1971年 市場化とネット化の紀元」(NTT出版 1900円)はニクソンのドルショックとインテルによるマイクロプロセッサーの発明、そしてEメールの開発という、すべてこの年に相次いだ「事件」が、その後の歴史を変えたのだということを論じた経済記者による秀逸な現代史。そう、確かにあの時代に何かが変わり「いま」が始まったのだ……。