創造神としての意気込みと覚悟
ここで「ジオラマ的時間」に注目。掲載写真はすべて作家自身による。多くは自然光での撮影。光の回し具合や影の落とし方で「時間の演出」が可能になる。勝手知ったる作家本人ならではの、セルフ・ディレクションのたまもの。加えて「打ち捨てられた古いモノ」への愛情も見逃せない。昭和の錆びた看板、ゴミ、空き缶、廃車、廃退した架空都市……。レトロ感を支える細部を徹底的に作り込むことで「移ろう情景のリアリティー」、「モノ」が「コト」化する、時間の流れを描き切る。
随所に挿入されるコラムも魅力的。「錆の再現方法」「国際基準=スケールの話」「Google活用術」など小ネタ満載、ジオラマファンならずとも思わず引き込まれる、心憎い作りだ。(アスペクト 1980円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。