違う人生を見せてくれる海外文学にハマろう編
「オールド・ドクター」ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ著、飯田隆昭訳
禁酒法時代のアメリカ。実家が破産し、一文無しのエドはオンボロのヨットで暮らしている。そんなエドが隠している酒を年中せびりに来る中年男のフレッド。ただの飲んだくれに見えるが実はインテリらしく、20歳のとき、ドイツにいて、ドイツ語で「資本論」を読んだという。かつては大金を稼いでいたのになくしてしまった彼は、国民の5%が富の95%を所有していると憤るが、エドは、革命なんか必要ない、遺産相続をストップさせて、遺産をみんなで分ければいいと言う。エドには妻子と金持ちの義母がいるらしい。(「明日の夜明け」)
他に、人々に崇拝されているが、実はヤク中の医師の人間くさい人生を描いた表題作など全16編の短編集。人間には、人生をドロップアウトしたり、野垂れ死にする自由もあることを思い出させてくれる。(国書刊行会 2400円+税)