違う人生を見せてくれる海外文学にハマろう編
「アリスのままで」リサ・ジェノヴァ著、古屋美登里訳
ハーバード大学で認知心理学教授を務めるアリスは、講演の途中で言葉に詰まった。次の言葉が出てこない。更年期のせいかと思ったが、医師は、いろいろな症状の中でアリスが一瞬、方向感覚を失って自分がどこにいるか分からなくなったことに注目した。
検査の結果、医師は若年性アルツハイマー病という診断を下す。アリスは息ができなくなった。夫にも言えず、自殺さえ考えた。この病気は50%の確率で子どもに遺伝する。息子は大丈夫だったが、娘の一人に遺伝していた。71歳で死んだ父は意味の通らないことを大声でわめいていた。アルコール依存症だと思っていたが、もしかしたら……。私はいつか、愛する夫の顔さえ分からなくなる。アリスは自分が自分でなくなっていくことに怯えた。
アカデミー賞を受賞した映画の原作本。(キノブックス 1500円+税)