「『スイス諜報網』の日米終戦工作」有馬哲夫著
昭和20年、「国体護持」と「天皇制存置」が決して譲れない降伏条件だった日本の戦争指導者と昭和天皇がポツダム宣言受諾に至ったのはなぜか。その舞台となったスイスでの終戦工作を検証した歴史テキスト。
工作の中心人物と自認するスイス公使館付海軍中佐・藤村義朗が戦後に発表した記事によると、交渉はOSS(米大統領直属の諜報機関)スイス支局長のダレスとの間で4月から行われ、失敗に終わったとされてきた。著者は、新たに発掘した歴史資料を読み解きながら、そもそも藤村が日本側の中心者ではなかったことを明らかにする。一方でダレスを軸に、亡命ドイツ人武器商や、国際決済銀行幹部らが暗躍した諜報網による終戦工作の全体像が描かれる。(新潮社 1400円+税)