老後を考える本特集

公開日: 更新日:

「老人の極意」村松友視著

「時代屋の女房」に出てくる暮らしの場の古道具に引かれるように、著者は老人のあやしい魅力にハマっていく。編集者時代、6代目三遊亭円生師匠に落語のむずかしさを尋ねたとき「男が化粧をせずに女になる」ことと言われ、年をとるとは、それが自然にできることだと解釈する。なるほど。

 作家の幸田文や吉行淳之介、馴染みの飲み屋やバーで出会う人生の先輩たちが丁寧に描かれる。彼ら彼女らの不可解な言動を、衰え、弱さ、危うさとだけ捉える浅はかさに気づかされる。あやしさは、年を重ねた特権的ユーモアなのではないか。そう思って観察していくと、違った風景が見えてくる。大阪新世界ジャンジャン横丁の道中で、しゃがみこみ、向き合って耳掃除をする3人の老人の目的は? 冷たく扱われた老婆が置いていったゆで卵の正体は? 書き下ろし30話は、いたずら心と優しさを備えた見事な年輪ばかり。遠戚のオバアチャンの究極のセリフも、ぜひ味わってほしい。(河出書房新社 760円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭