「自然と営み」日本風景写真協会著
「歴史の街並」や「山村」など、さまざまなテーマで「遺したい日本の風景」を紹介してきたシリーズの完結編(全10巻)。掉尾を飾る本書では、人々の暮らしと美しい自然が融合した風景にレンズを向ける。
例えば北海道の美瑛町の秋。広大な畑に刈り取った豆を天日干しするために積み上げた「ニオ」が規則正しく並んでいる。
ニオのてっぺんにちょこんと雨よけのカラフルなシートがかぶせられたその景色は、ユーモラスでもあり、現代アートのようでもある。
一転、岩手県遠野市の雪景色の中で、寒さに耐えるように南部藩特有の「曲がり家」がたたずむ作品からは、吹きすさぶ冷たい風の音が聞こえてくるようだ。
他にも、日本のマチュピチュとも呼ばれる兵庫県朝来市の「竹田城跡」や岡山県高梁市の「備中松山城」など雲海に浮かぶ山城や、奈良県上北山村の奥深い山谷に描かれたループ橋の美しい曲線、そして熊本県阿蘇北外輪山の「天空の道」など、自然と建築物や構造物が一枚の写真の中で競演する。
しかし、やはり多いのは農山村の風景だ。