「人間臨終考」森達也氏

公開日: 更新日:

「組織に入ると、主語が一人称でなくなってしまうんですよ」

 坂本竜馬、弁慶、頭山満、そしてガガーリン、ラスプーチン、江青ほか歴史上の人物18人の臨終に現代日本社会の問題を絡ませ、著者の妄想を駆使してパロディー仕立てにした作品である。

 例えば石川五右衛門は釜ゆでになったが、その残虐な刑を命令した秀吉は、すっかり忘れて夕食を食べていたことに。だが、どちらかというと〈横死〉した人物を取り上げたものが多く、森氏流のスルドイ社会批判の目を向けている。

「取り上げたのは以前に取材していた人が多いですね。どういう人なんだろうと興味を持っていたんですが、死ぬ間際ってだいたいその人の人生が凝縮されていますから」

 注目したいのは、ナチスの幹部で、逃亡先のブエノスアイレスで発見され、処刑されたアイヒマンの項だ。著者はアイヒマン裁判にオウム真理教の麻原彰晃の裁判を重ねて見る。かつて「A」でオウム真理教の信者の映画を撮って、加害者を擁護するのかと非難されたことがあるからだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭