酒と酒場の本特集
「二十世紀酒場 一 東京・さすらい一人酒」多田欣也著
お世辞にもうまいとは言えない、しかしなんとも味のある手書きの絵と文字。だからこそ酒場の飾らない雰囲気と脱力感が伝わってくる。都内の酒場を飲み歩いた筆者(職業はガーデンデザイナー)によるイラストエッセー本である。
老舗名店、立ち飲み、大衆食堂はもちろんのこと、角打ち(酒販売店で飲める店)情報にも詳しい。さらには肉屋・魚屋・総菜屋・かまぼこ屋で「飲める店」も。小岩・新小岩・立石周辺が飲んべえの聖地であることは間違いないようだ。
したり顔でうんちく傾けるでもなく、酒場のマナーと情緒を控えめにつづる著者。彼が酒場の世界遺産に選んだという新小岩の「大林」や小岩の「銚子屋」などは、すぐにでも繰り出したくなる。
(旅と思索社 1500円+税)