時代小説でめぐる「東海道五十三次」編
「時代小説で旅する東海道五十三次」岡村直樹著
日本津々浦々、紅葉まっさかりの今。旅行に出かける人も多いだろうが、今から約200年前の江戸時代後期に、庶民の間で旅行ブームがあった。その際、利用されたのが浮世絵にも描かれている「東海道五十三次」だ。旅人はいかなるいでたちで旅をし、宿場町でどう過ごしたのか。鞍馬天狗や清水次郎長を旅のお供に、紙上「東海道五十三次」タイムスリップ旅行に出かけよう。
旅といえば憂いもの辛いもの、という中世以来の意識が劇的に変化し、江戸時代には庶民までがこぞって物見遊山に出かけた。とはいえ、能天気な町人たちだけが東海道を歩いたわけではない。参勤交代のための大名行列や公務のための武士、さらには食い詰めた浪人やあだ討ちの武士、旅芸人、商人と身分も旅に出る事情もさまざまだった。
そんな旅人たちを主人公にした、あるいは宿場町を舞台にした時代小説を「東海道五十三次」に沿って紹介したのが、岡村直樹著「時代小説で旅する東海道五十三次」(講談社 各1500円)だ。上巻では江戸・日本橋から浜松までを、下巻では舞坂から京都・三条大橋までを収録。時代小説の紹介のみならず、著者自身が実際に各地を訪れ、写真と共に「宿場歩きガイド」やコラムもあり、読めばちょっとした旅気分だ。