心揺さぶる評伝特集

公開日: 更新日:

「小児科医 ドクター・ストウ伝」長澤克治著

 福島出身の両親のもとに生まれ、両親の渡米によって日系2世として育ち小児科医となったドクター・ストウの生涯は、際立って数奇なものだった。

 太平洋戦争時代、米国への忠誠を求められたストウは、銃を手にするのではなく強制移住先のユタ州で医学教育を全うする道を選択する。そして戦後、放射線が人体に与える長期的な影響を調査する原爆傷害調査委員会(ABCC)の現地要員として、彼は広島に降り立った。1958年から72年には、マーシャル諸島の水爆実験の影響を調べるため毎年ロンゲラップ島で子どもたちを診察し、放射線が与える甲状腺の深刻な障害を見いだしている。その後、米国に戻ると小児がんの治療に邁進し、複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法の分野に貢献した。胸のうちを語ることなくこの世を去ったストウの生涯が、さまざまな資料と証言から浮かび上がってくる。(平凡社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭