「箱根富士屋ホテル物語」山口由美著
創業者一族の末裔である著者が、最古のホテル・箱根富士屋ホテルの歴史をたどったノンフィクション。
幼いときに養子に出された創業者の山口仙之助の養家は、横浜で居留地の外国人を相手に商売をする遊郭だった。その財力で仙之助は、明治4年に渡米。同ホテルに残る資料によると、岩倉使節団の一員として渡米したとある。しかし、調べると山口姓の別人と判明。しかし、同時期にアメリカに渡っていたのは確からしい。さらにアメリカから持ち帰った洋種の牛を売却した金でホテルの建設資金にしたという逸話が残っている。その真偽を探るなど、仙之助から、正造、堅吉へと受け継がれてきたホテルの発展の軌跡を鮮やかに描く。(小学館 630円+税)