「ふくろう」梶よう子著
西丸書院番士として出仕が決まった鍋次郎は、3年前に結婚した妻・八千代の懐妊も分かり、人生の春を迎えていた。初登城を控えたある日、立ち寄った茶店で鍋次郎の顔を見た年老いた浪人が突然、土下座して許しを請い始める。鍋次郎は老武士の顔に心当たりがない。連れの嫁によると浪人は気鬱の病を患っているという。数日後、出先で再会した浪人は、鍋次郎の顔を見るなり怯え、橋の上から身を投げる。そんな中、納戸で父の日記を見つけた鍋次郎は、誕生年である文政5年の日記に自分の名前が出てこないことに不審を抱く。出生の秘密を探る鍋次郎は、自分の本当の父親が城中で刃傷事件を起こした松平外記だと知る。
史実「千代田刃傷」をもとに描く時代小説。
(講談社 680円+税)