「熱帯建築家 ジェフリー・バワの冒険」隈研吾、山口由美著
バワの名を世界に知らしめたインフィニティープールのオリジナルは、1981年開業の「トライトン・ホテル」(現ヘリタンス・アフンガラ)にある。同ホテルには、もうひとつ「グリーンプール」と呼ばれる水面に覆いかぶさるように樹木が広がったプールがあり、ただ泳ぐだけの施設だったプールが建物の一部、そしてリゾートの仕掛けとして発展していった原点が垣間見られる。
ビーチリゾートが水との融合なら、内陸部に位置する「ヘリタンス・カンダラマ」では、建物が岩山と緑と絶妙なコラボレーションを生み出している。岩山を抱くように立つ同ホテルでは、エントランスや廊下などに岩山がそのまま内装の一部として取り込まれている。一方で、その外周はジャングルと一体化しているため、テラスなどに野生の猿が出没したりするという。もちろん湖畔を望むインフィニティープールも備えている。
その他、自らの理想郷を構築するために38歳で建築家になった彼が心血を注いでつくり上げた自宅「ルヌガンガ」や、仕事場「ナンバー11」なども網羅。
建築家の隈氏は、20世紀から21世紀にかけて、建築の時代から庭の時代へと転換した建築シーンにあって、「『庭の時代』の到来を決定的にしたのが」バワだったとその作品を読み解く。