「拳銃伝説」大橋義輝著
1930年11月14日、東京駅で浜口雄幸首相が狙撃された。暗殺は未遂に終わったが、浜口はケガがもとで死亡した。
浜口を撃ったモーゼル拳銃は、清王朝の皇族で東洋のマタ・ハリとよばれた川島芳子の所有物だった。前年の8月1日、芳子の弟が亡命中の中国人の拳銃の〈誤射〉により死亡するという事件があり、弟を撃った拳銃を芳子が「弟を偲ぶよすがに」と譲り受け、「お国のために使ってください」と愛国社の岩田愛之助に渡した。愛国社の佐郷屋留雄がそれで暗殺を企てたのだが、佐郷屋は武者小路実篤が建設した〈新しき村〉の住人だった。
一丁の拳銃の数奇な運命を追ったノンフィクション。(共栄書房 1500円+税)