「血の極点」ジェイムズ・トンプソン著、高里ひろ訳
フィンランドの警察小説シリーズの第4弾だが、これほど異色のシリーズも珍しいだろう。というのは第1作「極夜」は北極圏の小さな町を舞台にした警察小説だったが、第2作「凍氷」で主人公のカリ・ヴァーラ警部が首都ヘルシンキに移ったかと思うと、第3作「白の迷路」では国家捜査局で特殊部隊を指揮するまでになる。
この特殊部隊が何をしているかというと、犯罪組織を撲滅しているのだが、このあとが凄まじい。麻薬や金を奪ってしまうのである。文字通りの強奪だ。その上がりの一部を、国家警察長官と内務大臣に渡すけれど、あとは特殊部隊が自分たちのものにするから、驚く。超法規的な活動を彼らは許されているとの設定なのである。地味な捜査活動を描く第1巻から、ど派手な非合法活動を描く第3巻まで、これほど激しい変化をみせたシリーズも前代未聞といっていい。
本書はその第3巻で激しく変化したカリ・ヴァーラ警部のその後を描いていくが、武器オタクでハッカーのミロと、童顔の巨人でアルコール依存症のスロという2人の部下を率いて、特殊部隊の活動はますますエスカレートしていく。今回は、国家警察長官と内務大臣をまとめて殺しちゃおうかとまで言いだすのだ。どこまで行くんだおまえたち。
その反権力の姿勢は、ヘルシンキの大藪春彦といっていいが、著者急逝のため、この第4部が最終編となったのは残念である。(集英社 840円+税)