【オキナワの現実】打開の糸口さえ見えない辺野古問題 日本社会のゆがみの象徴ではないか
「オキナワ論」ロバート・D・エルドリッヂ著
米海兵隊といえば本国ではエリート部隊だが、日本では傲慢な暴れ者イメージの典型。著者はこの海兵隊の文官として、対日政策の立案にたずさわってきた。だが、辺野古基地問題がこじれにこじれた昨年2月、基地に反対のデモをかけた沖縄の活動家とのいざこざで海兵隊が活動家を拘束した事件の映像を「参謀長の許可なくメディアに漏えいした」疑いで海兵隊を解雇された。
本書は留学生時代からの四半世紀を振り返りながら、日・米・沖の過去と現在を論じた半自伝的エッセー。
冒頭で生い立ちから留学時代を回顧し、ついで神戸大学時代に経験した阪神・淡路大震災と、東日本大震災で海兵隊の「トモダチ作戦」に関与した当時の活動を紹介する。最後の3分の1は在沖海兵隊の内部から見た地元メディア批判と、軍人優位の中で孤立した文官としての嘆きに費やされる。「在野のままだったら知らずにすんだ沖縄の嫌な部分」に直面する一方、軍内部の官僚的事なかれ主義と上層部の無理解の板挟みになり、ついに前述の「事件」に至ったという。血を吐く「青い瞳のサムライ」の叫び。(新潮社 700円+税)
「日本にとって沖縄とは何か」新崎盛暉著
東京出身の沖縄人として70年代から地元の市民運動や言論活動に関わってきた著者。本書は包括的な沖縄戦後史だが、特に20年前の95年、海兵隊員による少女暴行事件を機に湧き起こった民衆蜂起とそれ以降の動きが明快にまとめられて役に立つ。09年の選挙で自民党は大敗し、沖縄では自民党県議が全敗。しかしそれが沖縄県連を中央から解き放ち、「オール沖縄」体制を可能にした。現在の辺野古問題は対米関係という以上に国内の政治問題なのだ。
著者は一貫して、米国以上に沖縄を搾取してきた本土の政治と社会に鋭い批判の目を向ける。本土復帰後、日米安保体制が「構造的沖縄差別」であることに見て見ぬふりをしてきたのは本土の一般人なのだ。(岩波書店 780円+税)
「知る沖縄」木村司著
「沖縄を知る」ことは「日本を知る」こと。かつて那覇総局に勤務した新聞記者の著者はいう。沖縄に集中する米軍基地は「日米」安保体制そのものを体現しているからだ。にもかかわらず本土の関心は薄く、同情論をこえて沖縄を“我が事”として捉える者は少ない。
本書はそんな世間に向け、基地問題のこれまでの経緯や歴代知事の政権への対処、地元の「利権」として語られる軍用地料の実態や「沖縄振興予算」の内実などを図解や豊富な写真とともにわかりやすく紹介する。沖縄問題はとかく感情論や道徳論議に傾きがちだが、冷静にわかりやすく知識と情報提供に徹している。(朝日新聞出版 1300円+税)