ススキノ狸小路の由来は?
北海道新幹線が開通し、この機会に北の大地を訪れたいと考える人も増えていることだろう。そんなときに携えて欲しいのが、谷川彰英著「北海道の暗号」(宝島社 900円+税)。地名から北海道の魅力を解き明かす、一味違うご当地ガイドだ。
札幌一の歓楽街であるススキノの「狸小路」は、かつてタヌキが出没したことが名前の由来だが、これがただのタヌキではない。明治5年、一面の原野だったススキノの開拓が始まり、働き手である男たちが大勢集まった。しかし、夜な夜なタヌキの集団が現れ、男たちの財布から金を巻き上げたという。実は、このタヌキの正体は娼婦。当時ススキノ一帯には巨大な遊郭が形成され、男たちはこの地に足を踏み入れたが最後、タヌキに化かされたかのように散財してしまったというわけだ。
道内を旅しているとユニークな地名に出合うが、中高年男性の心を掴んで離さないのが、札幌の北にある「増毛(ましけ)町」。アイヌ語で「カモメの多いところ」を意味する「マシケイ」が語源であり、この町に発毛増毛の神様がいるわけではない。しかし、小樽市と余市郡の境にある「毛無(けなし)峠」から増毛町を見下ろすと髪が生えるという都市伝説が生まれていて、増毛町では「増毛町の願い」というスカルプヘアローションを売り出しているというから商魂たくましい。
名前のユニークさでは川も負けてはいない。空知地方を流れる「オモシロナイ川」は、お笑い芸人の鬼門のような場所だが、オモシロナイはアイヌ語で“島(中州)のある川”という意味。ちなみにアイヌ語では川のことを「ナイ」というため、夕張郡の「ヤリキレナイ(魚の住まない川)」、音威子府村の「オカネナイ(榛の木が生える川)」など、切なくなるような名前の川があちこちで見つけられる。
他にも、悲恋から普及した男爵芋、札幌が味噌味で函館が塩味のラーメンの秘密など、グルメの裏話も満載だ。