「一年有半」中江兆民著 鶴ケ谷真一訳

公開日: 更新日:

 喉頭がんで余命を宣告された明治の偉人が、遺書代わりに書き残した随筆。

 明治34年の春、滞在中の大阪で受診した著者は、医師から切開手術が必要だと言われ、すぐにがんだと察する。半年前からせき込むようになり、別の医師に喉頭カタルと診断され放置していたのだ。

 すぐに手術を受けるつもりだったが、妻らに反対され、手術は断念。臨終のその日まで、1日も無駄にするまいと決めて、医師に尋ねると、余命1年半と宣告された。せいぜい5、6カ月と考えていた氏はめぐまれたような気分になる。進行する症状とともに、政治や政治家への痛烈な批評や時間を惜しむように通い詰める人形浄瑠璃への思いまで。

 新訳で蘇った明治時代のベストセラー。(光文社 1040円+税)


【連載】文庫あらかると

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動