「今日という一日のために」近藤勝重著
毎日新聞夕刊の人気コラム「しあわせのトンボ」連載10周年を記念した傑作選集。
少年時代によく渓谷で遊んだ著者は、ある日、誘われるように川辺に立ち寄り、子供のころのように小石を早瀬に投げているうちに、童心とは無縁の寂しいような虚しいような気持ちになった。人生の風景が変わり、子供のころのように毎日が楽しいと思うことはなくなったと振り返る。一方で、自然とともに過ごすことのない今の子供たちの行く末を案じる「川風に吹かれて」のほか、身近な草花・花木から、定年男たちのその後、無為に過ごしたように見える日に出会った「笑いの天使とともに」など。日常の点景から世相までしみじみとした文章でつづる。(幻冬舎 1100円+税)