「光と影を映す」山田太一著
コンピューターなどが普及して便利になったことが人をちょっと孤独にして、ドラマがなくなってきた。
例えば、昔は「○○駅まで」と言って駅員から切符を買った。そこで著者は、気が弱くて「春日原まで」とどうしても言えずに苦しむ人物を主人公にしたドラマを書いた。今は自動販売機で買えるからドラマは消えてしまった。もしかしたら心を育てたかもしれないものが、制度や技術によって不要となった。便利さは人をのっぺらぼうにしてしまうところがある。愚直だったり無神経だったりして排除されそうな人だけどピュアなものを持っている人をすてきに描きたい。
「時代のたましい」を描いてきた著者が語るドラマ哲学。(PHP研究所 1200円+税)