「米中もし戦わば」ピーター・ナヴァロ著、赤根洋子訳
統計によれば、歴史を振り返ると米国のような既成の大国と中国のような新興勢力が対峙した際には、戦争に至る可能性が70%以上あるという。今後、米国と中国が戦争状態になる可能性はあるのか。
中国の軍事力増強の実態、戦争の引き金となる周辺諸国との攻防や考えられるシナリオ、東アジアのパワーバランスの行方などを分析しながら、多角的に検討しているのが本書だ。
中国の軍事力分析では、第2次世界大戦時には存在しなかった人工衛星による宇宙戦争の可能性や、すでに水面下で始まっているサイバー戦争にも言及。中国側の戦略を多方面から分析している。著者がトランプ政権の政策顧問を務めていることもあり、米国の対中政策を知る意味でも参考になる。
特に中国と周辺諸国のさまざまな問題を分析した第3部や、同盟国である日本やフィリピンとの連携について考察した第4部は必読。地理的にも政治的にも危うい位置にいる日本の在り方について考えさせられる。(文藝春秋 1940円+税)