「鮪立の海」熊谷達也著
三陸海岸の入り江に位置する港町、仙河海で船頭の息子として生まれた菊田守一。父や祖父のように名船頭になりたいと、高等小学校を卒業してすぐ父のカツオ船に乗り組む。
守一がカツオ漁の面白さが分かるようになったころ、日中戦争が始まって自由に漁ができなくなり、守一たちが乗るカツオ船は、漁船として操業しながら敵艦や敵機を発見する補助監視船に選ばれる。
だが、船に残る者のリストに守一の名はなかった。守一は下船させられた後、こっそり戻って船尾の雑納庫に忍び込む。父に見つけられるが、何とか乗船させてもらうことに。彼らの船はやがて戦闘に巻き込まれる。
海に生きる男の青春を描く。(文藝春秋 1950円+税)