「ESDの地域創生力」阿部治氏
「地方創生推進本部が発足したのは、第2次安倍改造内閣が発表された2014年9月。ローカルアベノミクスとして、あれから、全国各地でさまざまな取り組みが展開されていますが、必ずしもうまくいっているわけではありません。その原因は何か、何が足りないのかを各地の実践事例から探り、地域づくりをしている現場の人たちを勇気づけ、もっと元気になってほしいという願いを込めて本書を作りました」
本書はESD(持続可能な開発を担う人づくり)のパイオニアとして国内外における研究と実践に関わっている、立教大学社会学部・同研究科教授の阿部治氏がコーディネーターとなり、昨年開催された連続講演記録を基にまとめたものだ。
長崎県対馬市の「地域おこし協力隊」、島根県の小島・海士町での「巡の環」を通した人づくりほか、宮城県気仙沼市、鹿児島県鹿屋市など全国9つの先進事例が紹介されている。
「政府の地方創生がうまくいかない理由は何か。対馬市で地域創生に取り組んでいる前田剛さんは、東京一極集中の是正のため、誰でもいいから短期的に地方への移住者を増やそうという地方創生政策の中央集権的な進め方への違和感を挙げています。地域創生にもっとも重要なことは住民による地域への“誇りの回復”です。住民が誇りを持ち、地域の多様な資源と関わり、地域との関係性を主体的に深め、環境・経済・社会・文化のトータルな視点で地域づくりに取り組むことです。そして何よりも、地域の担い手たる“人づくり”を腰を据えてしっかりやることが肝心ではないでしょうか」