「町を歩いて本のなかへ」南陀楼綾繁著
著者が地方に出かけたときに必ずと言っていいほどに足を向けるのが、書店の郷土関係の書棚だ。その棚には、いわゆる「地方リトルプレス」の本や雑誌が並んでいるからだ。
盛岡でフリーランスのライターやデザイナーとして働く女性たちでつくる雑誌「てくり」、名古屋の暮らしを紹介する「棲」、ヌードルライターの山田祐一郎が発行する「福岡うどんのはなし」、秋田県が発行する「のんびり」、横浜のふたり出版社「星羊社」が発行する「横濱市民酒場グルリと」などがそれ。ここ7、8年で地方出版にはひとつの変化が表れていて、「外」の読者を意識した本作りになっているのが特徴。インターネットで地方出版物情報を全国に発信できるようになったのも一因である。
各地で開催される多くのブックイベントにも関わっている著者が新聞・雑誌やウェブに寄稿したエッセー・書評・ルポをまとめた本。(原書房 2400円+税)